環境や立場が変わっても、自分の中に普遍的に持ち続けている気持ちがある。
自分に素直に、まわりと自然に向き合う彼らの“心地よい暮らし”を送るために、大切にしていることとは ―

― 藤沢駅からすぐ、「8HOTEL」横にキャンピングトレーラー“エアストリーム”が停まっているのをご存知だろうか。ここは、軽部京介さんが丁寧にヘアカットをしてくれる、所謂プライベートヘアサロン。
この遊び心ある発想はどこからきたのでしょうか。

僕は中学生の頃から美容院に行き始めたのですが、そのくらいって色々恥ずかしい歳頃じゃないですか。例えば美容院で同級生の女の子に会ってしまったり。格好よくなりたいけど、コソコソ美容院に行くことに違和感を感じていました。漠然とですが、プライベート感があった方が良いと思ったんですよね。その頃から、美容師になりたいと言うよりは、そういうリラックスできる場所を造りたいと思い始めました。
美容学校に通い、その後は美容師として6年ほど修行したのですが、やはり違和感を感じるんですよね。一般的な美容室って、お客様の席がいくつもあり、スタッフが入れ替わり立ち代わりで対応していますよね。その割にリラックスとか癒しを唄う世界なわけで。だからもっとこじんまりとしたプライベートな美容室を開こうと考えました。2011年に平塚店を、2016年に藤沢店をオープンしました。僕は育ったのもこのエリアなので成り立つことかもしれませんね。
エアストリームを美容院にするという発想は、カリフォルニアのサーフカルチャーへの憧れからかもしれません。ハワイやタヒチ、ペルーなど、サーフィンのカルチャーは少しずつ国によって違います。その中でも、明るい町並みや、陽気な人々など、全てにおいてカリフォルニアの感じが好きなんです。だから自分のフィルターを通してそれを伝えていけたらと思い、店名にもカリフォルニア(店名は「HAIR CALIFORNIA」)と入れ、内装も意識しました。

― そもそもサーフィンとの出合いは?

高校生の頃にパンクのコピーバンドをやっていたのですが、人とやっていくことが面倒に感じてしまったんです。そこで次の趣味として始めたのが、友人に誘ってもらったサーフィン。19歳からはじめて、ほぼ毎日行っています。コンディションを整えに行っている感じかな。今は、家の場所も全てサーフィンとこのサロンに照準を合わせていますね。

― ほぼ毎日サーフィンだと、休日はどんな過ごし方をしているのでしょうか。

そうですね。海に行ったり…(少し悩んでから)やっぱり海ですね 笑。先日は家族で千葉にサーフキャンプをしに行きました。ビーチにテントをはり、サーフィンをしたり、3人の子供たちと妻はビーチで遊んだり、皆でバーベキューをしたり。家族もサーフィンに寄り添った人生を応援してくれている気がします。
あ、でも他には音楽や映画も好きですね。結局サーフィン系のものになってしまうのですが 笑。快適に仕事をするために、音楽の収集をしているのが正直なところです。レアグルーヴ系が好きで、世に出回っていない、グルーヴ感のあるマイナーな曲を発掘しています。ヘアカットとサーフィンをずっと続けられるよう、身の回りを整えておきたいんです。好きだったけど、3年やったら飽きちゃった!なんてことにはしたくない。せっかくこんなに好きなものを見つけたので、一生続けられるようにしたいんです。そのために、音楽があったり、映画があったり、常に自分の気持ちが新鮮でいられるようにしています。

Photo by John Hook

― このサロンからも海の気配を感じますよね。どんなところにこだわりましたか?

内装に関しては、もしこのすぐ外がビーチだったら…ということを考えながら造りました。そのままビーチに繋がっていくようなイメージです。もちろんカリフォルニアは意識していますね。そしてサーフ系の友人がプレゼントしてくれた写真やグッズを置いています。例えばこのDVD。僕が大好きなオーストラリアの有名なプロサーファーがいて、いつか彼の髪を切りたいと夢見ていていました。それを周りのいろんな人にも伝えていたんです。それでニューキャッスルまで行き、遂に彼に会った時に頂いたもの。もちろん髪も切ってきましたよ。格好よかったなぁ。

― 夢がありますね。今はどんなことを企んでいるのでしょうか。

実はフィルムを作りたいんです。世界中のサーフスポットをヘアカットをしながら旅していくロードムービー的なもの。これまでもロサンゼルス空港でキャンピングカーを借りて、2週間程、サーファーたちの髪を切ってサーフボードを借りてサーフィンをする、という旅をしました。他にもオーストラリアやハワイにも行きましたね。だから今度はアジアや日本をやりたいんです。サーフィンとヘアカットを絡めて日本一周、世界一周できたら最高に幸せですね。それを記録に残しながら、いろんな方との出会いを大切にしていきたいです。ベイフローで一緒にやりませんか 笑?

Photo by John Hook

自らを“ヘアカッター”と名乗る。即席でどこでも切れる、ということだそう。36歳のヘアカッター・軽部さんは、自らの生きる道を直視している。既に見つけたその道から逸れてしまったら、人生損するぞ!と自分自身に話しかけるように生きる姿は、潔くて、そしてとても力強い。なのにとても柔らかい表情で落ち着いて話すから、心地よくてすぐに虜になってしまう。誰だって、気持ちよく髪を切ってもらいたいはずだ。彼への依頼が後を絶たないことが容易に理解できる。

軽部京介

HAIR CALIFORNIA代表、藤沢店マネージャー
「切った時がベストではなく、日常的に維持できる、その人の個性を生かし、魅力を引き出すヘアスタイルを」という考えのもとに、シャンプーからカット、カラーやパーマ、セットまでをひとりで行う“ヘアカッター”。一人ひとりのお客様にきちんと向き合い、120パーセント満足いく仕事がしたいという思いからはじめる。日本の美容学校を卒業した後、カリフォルニアやハワイで本場アメリカの技術を学んだことで、外国人によく見る自然なカットやカラーが得意。熱心なサーファーで、アフターサーフの気持ち良さを感じることのできるナチュラルな仕上げを自分のスタイルとしている。
http://www.haircal.com/